まず小説「舞姫」と、現実に起きた「Elise Marie Caroline Wiegert」来日事件が区別されていない事が問題であろう。一番最初にその違いを書くべきで「ピタゴラスの定理」を書いている場合じゃない。本来「舞姫」は私小説であり多数の読者の目に触れる「国民之友」という当時日本唯一の「総合雑誌」に発表したものだ。その「誰が読むか解らない」雑誌に「読む人によっては登場人物が誰だか即座に解る」小説を書いた事が先ず疑問であろう。しかもElise来日事件から二年後で、関係者は皆生存中。鴎外自身は結婚し一児を得た途端に妻を離縁したタイミングで発表している。一番の謎は「一体何の目的で誰に向かって書いたのか?」「何故このタイミングなのか?」が解らない事だ。
この本は、そこを書いたとの事で 途中までは「成る程」と思い読み進めていたのだが あれ?この著者「エリス人妻説」の信者だったのだ。え〜とElise Marie Caroline Wiegertは独身21才独国女性と殆ど判明してしまった。論拠というか事実関係を誤った以上 この本の存在意義は大分減じてしまったと思う。
鴎外の恋 舞姫エリスの真実
と
それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影
は定番の書籍になっている。これ以前に書かれたエリス探索本をほぼ潰滅させる内容だからだ。
この本のポイント、森林太郎が舐めてかかってた「縁談」が自分の知らない内に予想以上に進んでいて しかも陸軍トップに近い人のゴリ押し食らって泣くも涙の追い返し+登志子との結婚がワンセットのお話だったと絡めた視座は納得出来た。そりゃ辞表も出したくなるしうつ状態にもなる。鴎外にアブサン飲みながら拳銃弄られた母親と祖母は驚いたろう。だからと無理強いして結婚さすことはないと思う。まあエライ人がゴリ押しするエラい人の娘との結婚話で祖母が浮かれてたんだろう。案外孟母は積極的ではなかったようである。森林太郎が留学中に西周がお膳立てしていた話という説もある。結婚しては見たが、登志子となるべく一緒に居たくないから作品数が全生涯で一番短期間に一番多い二年間だったというのも解る。当て馬にされた坪内逍遥が苦笑いするのも納得する。Depressive Stateとかではなく外的因子によって双極性障害・躁状態に似た状況になったのか?とも思える。
でも森於菟さんが誕生してるわ その於菟氏が鴎外とそっくりな以上、最低一回はナニかしたわけであろう?何にもせずに逃げ出したのなら それなりに立派だったんだが。彼はナニもしないで、という事が出来た人であったらしい。基本的に女性に淡白なのだ。これは家族の文章でも解る。それに登志子は女中やら何やら他三人も連れて嫁いできて、鴎外を「殿様」その父を「大殿様」等々日常的に使うという明治という新しい仕組みに生きる鴎外から見ればイライラする存在なわけだ。逃げるタイミングも遅いし於菟が生まれた後で逃げるのだったら於菟に「家」を継がせて自分が若隠居したって構わないだろう。弟に継がせる事も出来たはずで「家」制度から逃げようとすれば出来た。家と個人を分ける事が難しくても義理(継嗣誕生)は果たしたから若隠居して後見人として実権を握ったまま個人として生きる事は江戸の昔から武士階級では見かける構造だと思う。
まあ「人妻説」の著者ではあるが、森林太郎の苦悩は解る。で、離婚する準備として陸軍軍医達に喧嘩吹きかけまくり、親戚の筈だった医学会の重鎮にまで喧嘩を売り己の家から逃げ出したのは どうしても離婚せねば己の気が済まないというところまでも解る。「舞姫」を書いた頃から森林太郎は自分以外を認めない勢いで敵に(つまり自分以外全員に)論戦・論難を吹きかけまくっている。今の医学会で学会長と座長と理事全員に喧嘩を売る医者は二人位しか知らないが、大抵爪弾きの医者八分となる。そこまで喧嘩する必要が有るのか?喧嘩論文は今でも読めるが、自分に酔った感じの文章で作家鴎外の文章と随分違う。
この本だが、独特の観点で「舞姫」を見ている特徴的な部分が有る。「あれは医学論文の書き方である」これはとても肯ける見方だと思う。唯一の違いは「最後に引用文献が無い」くらいなものである。ただこの「仮面の人・森鴎外」にも私は論文的な、それも症例報告的な臭いを感じる。よく◯学部では 有る事だが、下っ端の学会デビュー発表の原稿に上役が手を入れているうちに誰の原稿なんだか解らなくなって後半部分が殆ど書き直しになった文章を連想するのだが?似たような事でも存在したのだろうか。書き始めと書き終わりの印象が全然違う気がする。
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仮面の人・森鴎外: 「エリ-ゼ来日」三日間の謎 単行本 – 2005/5/1
林 尚孝
(著)
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- 本の長さ233ページ
- 言語日本語
- 出版社同時代社
- 発売日2005/5/1
- ISBN-10488683549X
- ISBN-13978-4886835499
登録情報
- 出版社 : 同時代社 (2005/5/1)
- 発売日 : 2005/5/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 233ページ
- ISBN-10 : 488683549X
- ISBN-13 : 978-4886835499
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,289,406位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 169,014位ノンフィクション (本)
- - 323,223位文学・評論 (本)
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2013年10月18日に日本でレビュー済み
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2006年1月1日に日本でレビュー済み
若き日の森鴎外がドイツ留学から帰国した時、彼の後を追ってエリーゼ・ヴィーゲルトという女が来日した。これは「エリス事件」として知られているが、鴎外とこの女性との関係はよくわかっていない。本書では鴎外は軍医を辞してまでエリーゼと本気で結婚する気だったという説を展開する。
仮説のひとつに鴎外の「我百首」のなかの
護謨をもて消したるままの文くるるむくつけ人と返ししてけり
が、消しゴムで消した後のある鉛筆書きの手紙を、鴎外がエリーゼに別れの手紙として送り、エリーゼがそれを見て激怒したことを詠ったものだとしている。しかし私はこの説には賛成できない。毛筆で手紙を書かれるのが習慣だった当事、いくらなんでもそんな失礼なことはしないであろう。それに鴎外がドイツから帰国したのが26歳のとき。「我百首」が発表されたのが46歳と期間が空き過ぎている。
この短歌は見知らぬ人から鉛筆書きの失礼な手紙をもらった鴎外の腹立たしい気持ちを詠ったものではないかと私は考える。
しかし本書では興味深い事実も明らかにされている。ひとつはエリーゼは鴎外を追いかけてきたのではなく、彼より先に出発し後から日本に着いていること。鴎外の留学中から後見人の西周が縁談話をすすめていたことなどである。またエリーゼの旅費を誰が出していたのかという謎も残る。
鴎外とエリーゼとは実際どんな間柄だったのだろう。年月は経ってしまったが新たな証拠は発見されないだろうか。
仮説のひとつに鴎外の「我百首」のなかの
護謨をもて消したるままの文くるるむくつけ人と返ししてけり
が、消しゴムで消した後のある鉛筆書きの手紙を、鴎外がエリーゼに別れの手紙として送り、エリーゼがそれを見て激怒したことを詠ったものだとしている。しかし私はこの説には賛成できない。毛筆で手紙を書かれるのが習慣だった当事、いくらなんでもそんな失礼なことはしないであろう。それに鴎外がドイツから帰国したのが26歳のとき。「我百首」が発表されたのが46歳と期間が空き過ぎている。
この短歌は見知らぬ人から鉛筆書きの失礼な手紙をもらった鴎外の腹立たしい気持ちを詠ったものではないかと私は考える。
しかし本書では興味深い事実も明らかにされている。ひとつはエリーゼは鴎外を追いかけてきたのではなく、彼より先に出発し後から日本に着いていること。鴎外の留学中から後見人の西周が縁談話をすすめていたことなどである。またエリーゼの旅費を誰が出していたのかという謎も残る。
鴎外とエリーゼとは実際どんな間柄だったのだろう。年月は経ってしまったが新たな証拠は発見されないだろうか。